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(小林尹夫-哲学ルーム)

アメリカ発世界恐慌(1929年大恐慌)とソビエト社会主義(1928年第1次・1933年第2次計画経済)(1)

アメリカ発世界恐慌(1929年大恐慌)とソビエト社会主義1928年第1次・1933年第2次計画経済) 第1回

                                                                 小林尹夫

《はじめに》

『我々は今、「21世紀型恐慌」のさなかにいる。リーマン・ショック以後、財政赤字を悪化させた各国は債務危機に陥り、ギリシャに端を発した欧州のソブリン(政府債務)危機、米国のデフォルト(債務不履行)危機などを引き起こしている。今まで繰り返し起こってきた恐慌とは、根源的に違う部分があると同時に、古典的な恐慌としての性格も多分にある。新しいものと古いものの両方の側面を持ちながら、最も恐ろしい経済現象を目の当たりにしている。

 恐慌は文字通り人々を「恐れ慌(あわ)て」させる。なぜなら、恐慌は経済活動のショック死現象だからである。経済活動に一気にブレーキがかかり、生産が急激に落ち込み、通貨供給を増やす「信用創造」の流れが断ち切れる。それが恐慌だ。その根源的な特性は19世紀だろうが、20世紀だろうが、21世紀だろうが変わらないが、恐慌をもたらす力学、その後の展開は以前と現在とでは大いに異なる。産業革命を経て、歴史とともに複雑化した経済は20世紀の最後の10年に「グローバル時代」という新たな局面を迎えたからである。…

 結果への起因を探る歴史の旅をすれば、我々が置かれている「今」と「これから」が見えてくるはずだ。打開策の見えない経済状況だからこそ、恐慌の歴史を振り返る意義は非常に大きい。』

 これは、浜矩子・同志社大学大学院ビジネス研究科教授の著書『恐慌の歴史』(2011年11月刊・宝島新書)の冒頭の一文である。1952年生まれの氏は、一ツ橋大学経済学部を出て、75年に三菱総合研究所に入社し、以後、ロンドン駐在員事務所所長兼駐在エコノミスト、経済調査部長を歴任。2002年より同志社大学の教授となり、『グローバル恐慌』(岩波新書)『ドル終焉』(ビジネス社)、そして最近では『どアホノミクスの断末魔』 (角川新書)など多数の著作を発表し、現代資本主義の抱える深刻な政治的経済的危機を取り上げ、容赦の無い警告を発している。そんな氏は、経歴からも明らかなように、スミス・ケインズの流れをくむ近代経済学の専門家であり、そこに出発点があり、決してマルクス主義経済学から出発しているわけではない。とは言え、氏は2020年3月に講談社より刊行した『強欲「奴隷国家」からの脱却~非正規労働者時代をマルクスが読み解いたら~』において、マルクス主義哲学・経済学に対する深い理解と高い見識を示している。

 現在世界は、新型コロナウイルスの「パンデミック」(世界的流行)下にあり、現代資本主義の危機は、浜教授が著書『恐慌の歴史』で指摘しているように、「21世紀型恐慌」として一層深化・発展し、「1929年大恐慌」の再来・爆発が懸念されている。

 本著作『アメリカ発世界恐慌(1929年大恐慌)とソビエト社会主義(1928年第1次・1933年第2次計画経済)』では、マルクス・エンゲルス、そしてレーニンが明らかにした恐慌論及び社会主義論を提起し、その後でアメリカで実際に起こった二つの世界恐慌リーマン・ショックと1929年大恐慌)の本質を解明し、最後にレーニンスターリンによる社会主義建設40年の歴史を振り返り、資本主義制度が生み出す「恐慌」の後に実現される社会―それは、近代コミュニティー制度の社会から社会主義制度の社会へであり、それこそが歴史の必然の流れであることを明らかにしたい。 

 浜教授は『結果への起因を探る歴史の旅をすれば、我々が置かれている「今」と「これから」が見えてくるはずだ。打開策の見えない経済状況だからこそ、恐慌の歴史を振り返る意義は非常に大きい』と述べている。まさにその通りであり、著者もその提起を受け止め、「歴史の旅」に就き、恐慌の真の「打開策」と「これから」の社会とは如何にあるべきか、を明らかにしたいと考えるものである。