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(小林尹夫-哲学ルーム)

『君たちは―』(第23回)・資本主義とは何か (3)

君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)-私の読書体験ノート

 

(2)資本家と労働者の関係は搾取と被搾取の関係にあり、資本家と賃金労働者の関係は非和解的なものである。

 資本主義国家たる現代日本では会社・企業とはどのような存在か。資本主義経済の下では、商品(製品)を世の中に提供するという社会的に意義ある役割を担っている企業であっても、何より大事なことは利潤・利益の追求であり、企業経営の至上目的は利潤と金儲けである、ということになっている。いかなる企業も利潤を追求しなければ企業として存続することが出来ないようになっている。利益を上げない企業は競争に敗れ、倒産する。それ故、少々自然が破壊されようと周囲の人間が傷つこうとお構いなし、自然や人間の反逆や反乱によって自らが倒されるという危機に直面しない限り、飽くことなき利潤追求を至上目的として突き進み続けていくのである。

 では、そんな企業の利潤はどのように生み出されるのか?経営者・企業の利潤の根源とは何か?

 実は、企業経営者(資本家)は職場の労働者を安い賃金で働かせ、「賃金分以上の価値」を含む製品、即ち「賃金労働分」だけでなく「ただ働き分」を含んだ製品(商品)を生産し、これを市場で販売し、その「ただ働き分」(労働者から搾取した分)を自らの利益・儲けとしている。馬や牛がわずかな餌代だけで大仕事(莫大な輸送代稼ぎ)をしているように、労働者もわずかな餌代(食事代・住居代・衣類代・育児費などを賄う賃金)をもらうだけで大仕事(莫大な価値を持った製品の生産)をしている。そこに生じる差額分「ただ働き分」即ち労働者から搾取・収奪したこの部分が工場・企業を所有する資本家のものとなり、それが彼らの利潤・利益の源泉となるのである。

 つまり、労働者の取り分である「賃金」が増えれば、その分資本家の取り分である「利潤」は減る。また、労働者の労働時間が増えれば、必然的に資本家の利潤が増える。また、労働の生産性(時間当たりの労働密度)が高まれば、必然的に利潤も高まる。どれをとっても、労働者の賃金量と資本家の利潤量は反比例しあっており、搾取される側と搾取する側との関係は、完全に非和解的なものとなっているのである。