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(小林尹夫-哲学ルーム)

『君たちは―』(第24回)・資本主義とは何か (4)

君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)-私の読書体験ノート

  そして、資本家・企業経営者は、そうして生産した生産物・商品を売らねばならない。売って初めて利益となるのである。売りに出す商品の値段は、基本的には、その商品に含まれている価値(材料費・設備費・労働者に支払った賃金・労働者から搾取した未払いの労働分)によって決まる。価値通りに売っても利益が出るのは、「労働者から搾取した未払いの労働分」が含まれているからである。
 しかし、商品の値段はどこの会社のものも皆まったく同じというわけではない。企業によって、賃金も違えば、使っている機械も様々であり、性能が良く短時間に大量の生産が可能な機械を使えば、当然個々の商品の値段は安くなる。
 したがって、資本家・企業主は、同業他社との販売競争に打ち勝つために、常に、日々、機械化・合理化を進め、労働者の労働密度を高め、賃金を低下させること(正社員よりも非正規の安い労働者を使う等々)を追求しなければならない。どの企業家・資本家も、より安くてより高品質の商品を生産し、新商品を生み出し、他の企業家との食うか食われるかの市場争いに打ち勝ち、自分の販売市場と売上を拡大させるべく、弱肉強食の激しい生存競争を繰り広げざるをえないのである。それが彼らの宿命である。
 資本主義体制下では「労働者からの搾取の強化」と「他企業との弱肉強食の競争の強化」は、企業家の宿命であり、必然の行動法則であり、誰もこの運動を止めることはできないのである。そうしないなら、企業は競争に敗れ、倒産し、死滅してしまう。それ故に、少々自然が破壊されようと、周囲の人間が傷つこうと、労働環境が悪かろうとお構いなしであり、飽くことなき利潤追求を至上目的として突撃を繰り返していくのである。