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(小林尹夫-哲学ルーム)

『君たちは―』(第22回)・資本主義とは何か (2)

君たちはどう生きるか』(吉野源三郎-私の読書体験ノート

 (1)資本主義社会は階級社会である。

 階級的差別や対立が無かった原始共産主義社会が崩壊し、奴隷制社会が始まると、一つの部族集団によって社会的に獲得された富や生産物・財貨が、一握りの力の強い支配者集団の手によって私有化された。こうして「生産する者、働く者」と「土地や生産物を独り占めにし、富を私的に所有する者」との矛盾・対立が発生した。「持てる者」「土地・生産活動用の道具・財貨を私的に所有する者」の階級と、「持たざる者」「支配される生産者」の階級との対立の発生である。この階級対立は封建制社会へ、そして資本主義へと継続され、発展していく。奴隷制社会の階級対立の基本は「奴隷所有者階級」と「奴隷階級」の対立であり、封建制社会のそれは「封建領主」と「農奴」の階級的対立であり、資本主義社会のそれは「資本家階級」と「労働者階級」の対立となる。資本家階級とは生産手段(生産の資本・元手である土地や原材料や工場など)を私有する階級であり、労働者階級とはその資本家に自らの労働力を売って賃金を得ている階級である。

 ただ、ここで小資本家・土地の小所有である農民について、彼らが資本主義制度下でどのような地位にあるかについて、少し説明を加えて置きたい。

 同じ資本家・私的所有者でも、大資本・独占資本(独占的大ブルジョアジー)と小資本家や土地を私有する小農民(中小ブルジョアジー)とは根本的に異なる。その最大の違いは、前者は国家権力の支配者であり、権力を通じても自己の利益の獲得・拡大を目指しているのに対し、農民・中小ブルジョアジーは、労働者階級と同様に権力から外れ、権力によって支配され、収奪の対象とされているのである。さらに、彼らの多くは労働者階級と同様、生産活動に携わっている生産者である。故に、資本主義社会の階級的対立は、「国家権力を支配する独占資本家階級」と「労働者及び農民・中小資本家からなる生産者・人民の階級」の対立となる。

 そして、こうした生産関係・経済構造(社会の土台部分)における階級対立の上に、政治的対立、文化的対立、倫理的対立、道徳的対立、思想的対立がある。

 ところで、資本家と労働者の関係は、搾取と被搾取の関係であり、この問題をより深く理解することにより、資本家と賃金労働者の関係が非和解的なものであることがよく分かる。次に、この問題について述べることにしよう。